意地悪な君と秘密事情
昼休憩も終わり、優奈は“詳しく決まったらまた言うね”と言って自分の持ち場へ戻って行った。


「…………はあ~」


自分のデスクに戻った私はパソコンを眺めながら思わずため息が零れてしまう。


「何、深刻そうな顔してんだよ」


パソコンを見つめため息を溢していた私の様子を見ていたのか、順平は私のところへやって来た。


「……順平がこっちにいるの珍しいね」

「まあいくつか抱えてる案件のうちのひとつの会議をさっきまでここでしてたから」


順平はそう言って私のデスクに寄りかかると、


「で?何で大きなため息ついてるわけ?また何かやらかしたの?」


そう尋ねてきた。


「やらかした前提で話すの止めてください」

「だって高梨が深刻な顔してる時って大体何かしらやらかした時じゃん」

「ちょっとそれは失礼じゃない?」


私がそう言って怒ると順平はクスッと笑みを溢す。


「何があったか知らねーけど、ため息ばっかり溢してると幸せが逃げるぞ?」

「そうなんだけどね~……」

「まあそんな悩んでるなら今度話聞いてやるよ」

「いいよ、大丈夫」


……さすがに全く関係の無い順平にさっきのやり取りを相談できるはずないでしょ……。


私は内心そんなことを考えながら苦笑した。


「あ、そういえば、この前プレゼンしに行った企画このまま無事通ると思う」

「ホント?」

「ああ」

「良かった~……。まあ順平のプレゼンのおかげなんだろうけど。ありがとう」


そう呟いて思わず笑みが零れた。


「俺は高梨の企画を元にプレゼンしただけだから、今回ちゃんと通ったのは高梨の企画書のおかげだと思うけどね」


順平は私にそう言うとクスッと笑みを溢した。


「じゃあそろそろ戻らないとさすがに怒られそうだから、戻るわ」

「確かにそろそろ戻らないと、いつまで打ち合わせしてるんだよって上司に怒られるだろうね」

「あはは……それは避けたいな」


順平は苦笑すると、急いで自分の部署に戻って行った。


順平と少し話したおかげで少し気分転換ができた。


「よし、私も仕事をしますか……」


小さな声でそう呟いて私は再びパソコンの画面に視線を戻した。


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