意地悪な君と秘密事情
目覚まし時計の音が鳴り、重たい瞼を開け目覚ましを止める。


「……ん……もう朝……?」


結局あのままベッドの上で眠ってしまったらしい。


「……眠い」


なんとかベッドの上から起き上がると身支度を済ませ、簡単な朝食を作る。


朝食を済ませ化粧もすると、いつものように電車に乗り込み会社へ向かう。


「おはようございます」


そう言って自分の席に腰を下ろし、今日の仕事内容をパソコンでチェックしていると、


「美和ちゃん、おはよう!」


優奈がやって来た。


「昨日美和ちゃんと桐島さんが突然居なくなってビックリしたよ~」

「ごめん」

「で?二人で居なくなった後、桐島さんと何か進展はあった?」


にやにやと笑みを溢しながら私を見つめる優奈を見て、私はため息を溢す。


「何を勘違いしてるか知らないけど、何も無かったわよ。普通に駅前まで送って貰っただけ」

「なんだ~つまんないの」

「つまらないって失礼ね。そういう優奈は柏木さんと何かあったの?」

「うーん?一応、今度ご飯に行く約束はしたよ」


優奈は嬉しそうにそう呟くと、


「柏木さんってカッコイイし、大人の余裕みたいな雰囲気もあっていいよね!」


そう言ってニコニコ笑っている。


「そりゃ良かったね」

「うん」


優奈はまた後で話をしようと言って、自分の持ち場に戻って行った。


「高梨、この間の企画書って出来た?」


優奈が戻って行った後、入れ違いに私の席にやって来たのは同期の楠木順平。


営業部で活躍する順平は私たち若手の中でもかなり仕事が出来るため上司からの信頼も厚い。


そんな順平は仕事ができるからと言って嫌味なところはない。


「ああ。これのこと?一応できてるけど、確認はまだなのよね……」

「じゃあ確認して大丈夫そうなら貰っていい?」

「了解」


そう答えながら私は順平を見て頷く。


「確認したら順平に渡せばいいの?」

「ああ。よろしく」


慌ただしく出て行った順平の背中を見送りながら私は持っていた企画書に視線を落とす。


小さくため息を溢し、企画書を持ち上司の席に向かった。

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