意地悪な君と秘密事情
なんとか考えていた企画も上司の許可が下りたので順平に届け一息つく。


……神様がいるのなら、何でこのタイミングで彼と再会させたんだろうか?


きっと桐島くんにとっても、私にとっても、再会するべきじゃなかったと思う。


「…………」


考えたくないはずなのに頭の中に浮かぶのは、数年ぶりに再会した彼のこと。


とっくに終わった初恋で今さらどうにもならないし、しばらく恋愛をしないと決めていた私にとっては関係のないこと。


気持ちを切り替えるようにパソコンに向かい、ひたすら溜まった仕事を減らしていった。


学生の時は、人並みに恋をして付き合って、大好きな人と結婚して、その人と家族を作っていく。そんな未来をずっと夢に見てた。


だけど高校、大学と卒業して就職して気づけば恋愛を諦めて仕事に追われて、夢に見ていた未来とは全く違う道を歩いていた。


まだ憧れとかそういうものがあった時は20代半ばまでには結婚もして子どももいるそんな未来を夢見ていたけれど、現実は結婚はおろか恋人も居なければ恋愛もしていない。


今年の誕生日で27歳になる。昔思い描いた理想と違う未来(いま)の私。


そう考えると一気に気持ちが落ち込む。


「高梨、すごい顔してるけど大丈夫か……?」

「……えっ?」


企画書を持ってやって来た順平は心配そうに私の顔を見つめる。


「すごい思い詰めた顔でパソコンを睨んでるけど大丈夫か?」

「大丈夫よ」

「ならいいけど。そういえばこの企画、今度俺と高梨で一緒に進めることになったから改めてよろしく」

「そうなんだ。順平と一緒なら心強いよ」

「俺も高梨とだと心強い」


順平はそう言うと、詳しいことはまた連絡する、と言って慌ただしく自分のデスクに戻って行った。


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