意地悪な君と秘密事情
桐島くんに啖呵を切った次の日、もう後悔していた。


「…………」


激しい頭痛に、久しぶりの二日酔い。


そして何故か私の部屋の床の上で寝息を立てている彼。


異様なこの光景にさらに頭が痛くなる。


…………昨日、居酒屋で二人で飲んだ後、何がどうなって彼が此処に居ることに繋がった……?


必死に昨日の記憶を辿るが全くと言っていいほど思い出せない。


桐島くんは床に転がっているから…………多分、何も無かったはず。

たぶん……。


何度考えても思い出せない記憶にもうため息しか出ない。


今日が土曜日で仕事が休みだということが不幸中の幸いだった。


こんな二日酔いの状態で仕事に行くことは出来ないし、この訳が分からない状況のまま仕事に行ってもきっと集中できない。


とは言っても床に転がっている彼をそのままにしておくことも出来ず、私は渋々桐島くんを起こすことにした。

「桐島くん、起きて」

「んー……」

「んーじゃなくて、起きてってば!」


私は何度も桐島くんの体を揺らし必死に起こす。


「ん……?高梨?おはよう」

「おはよう。……ってそうじゃなくて、なんで桐島くんが私の部屋に居るの?!」


まだ寝ぼけながらあくびをしている桐島くんに向かって私は疑問をぶつける。


「なんでって……覚えてねーの?」

「は?何を?」

「……はあ~……」


きょとんとする私を見た桐島くんは大きなため息を溢した。


「あの後、話しながらずっと飲んでただろ?……で、そろそろ帰ろうとしたら眠り始めたのは誰だよ」

「え?でも私が寝てたんなら何で私の家に居ることに繋がるのよ?」

「そのまま店に放置するのも悪いと思ってタクシーを呼んで、運んだ」

「で、でもここの住所は?どうやって……」

「普通にタクシーに乗った時に一度叩き起こして聞いて。まあ着いた時にはまた爆睡してたから勝手に鞄から鍵を出して部屋開けたけど」


桐島くんはそう言って眠そうにあくびをする。


「家まで運んでくれたことにはお礼を言うけど……なんで桐島くんまで泊まったの?」

「……俺も眠くて、高梨をベッドに運び終わって疲れてそのまま……気づいたら寝てた」


そう呟いて桐島くんは“んー……っ”と伸びをする。

「一応言っておくけど、酔っぱらった高梨を部屋に運んだからって特に何もしてないから。俺、そこまで不自由はしてないし」

「別になんにも聞いてないし」

「そう?」


……その意地悪な笑顔が余計ムカつくんですけど。


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