恋に落ちたらキスをして
2.親睦を深める
「じゃ俺たちの出会いに乾杯?」

「出会いじゃないわ。交渉成立よ。」

 冷蔵庫からビールを出して、それから料理も出した。

「意外ね。料理できるのね。」

「いいえ。これはお手伝いさんがやってくれて置いてってくれるんです。」

「ハハッ。本当に嫌味ね。」

「まぁまぁ。
 笹島先輩も恩恵にあやかってくださいよ。」

 ビールを開けて缶で乾杯した。
 飲みっぷりはかなり良かった。

 失恋で酒に飲まれてそのまま………。
 簡単過ぎるなぁ。
 俺、そんなにやることないってことだ。

 美味しく頂くだけっていう……。

「あやかるのも癪だけど、園田くんに気を遣うのも馬鹿らしく思えるわ。」

「ひどい言われようですね。
 ま、いいんですけど。」

 出した箸で取り皿に取り分ける笹島先輩の所作は美しかった。
 ほらっと俺の分まで取り分けてくれた。

「園田くんはもっと食べた方がいいわよ?
 せっかく美味しいご飯があるんだから。」

「何、言ってるんですか。
 俺、細マッチョですよ?見ます?」

「……遠慮しておくわ。
 ご飯が不味くなりそうだもの。」

 ノリが悪いと言うか、礼儀正しいというか……。
 ガードが固いのは前から知ってるけど……ま、同居するところまでは落とせたから毎日暮らしてれば簡単に………。

「で、晴れて同居人なんですから、2人でいる時くらい名前で呼んでもいいですよね?
 あと、敬語じゃフェアじゃないんで、タメ口で良くないですか?
 ねっ。綾。」

 年下の可愛い男子をアピールしてにっこり笑顔を向けると頬をつねられた。

「いででで………。」

「ま、このくらいの仕返しで許してあげるわ。
 さっき演技とは言え、頬にキスしちゃったペナルティーでいいわよ。」

「綾は真面目だなぁ。」

 しみじみ言うとクスクス笑われた。

「真面目は園田くんでしょ?
 わざわざ聞かなくてもすぐにでも綾って呼ばれると思ってたわ。」

 変なところを指摘されてなんとなく面白くない。

「そういう綾はまだ園田くんだけど?」

「あぁ。ごめんなさい。園田何くんだっけ?」

「…………尚之です。」

 簡単……では無さそうだ。






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