誰にも向かない君の笑顔が私だけのものになったら
彼のあの笑顔が、私に向けられたら。
考えるだけで心拍数が上がる。
やめてよ。話したこともない前原くん。
名前を知ったのだって、君が去った後の靴箱を見ただけなのに。
不器用そうな君が笑っていた姿を思い出すだけで、何もできなくなるの。
本を読むことも、明日提出の宿題を終わらせることも、寝ることだって。
君はどうしてそんなに私の心を強く揺さぶるの。
前原くん。前原くん。
「前原くん」
彼の名前を声に出してみると、その言葉は空気と一緒になって私を包み込んだ。
ねぇ、前原くん。
君の名前を呼ぶだけでこんなにも心がぽかぽかするのはなぜですか?
小さくて大きな勇気を振り絞って、私が前原くんに話しかけられたら、その答えを見つけることができますか?