こっちむいて?羽生
目の前のあいつは一度フラれた彼氏持ちの女の子を廊下に誘ってる。


あー、萎えたわ……


やっぱりやめやめ!


あんな未練がましい男なんか、こっちから願い下げだ。


美羽には悪いけど、告白なんてしてやらない。


だいたいこんなにいい女がいつも近くにいるんだから、向こうから告白とかしたって良さそうなもんなのに。


でも、わかってる。


そうじゃないんだ。


美羽に一途な羽生だから、好きになったんだってことは自分が一番よく知ってる。


そのうち羽生が、一人で教室に戻ってきた。


心なしか表情は明るく見える。


なんか……ムカつく。


美羽と話せたからってデレデレしちゃってさ。


ふとこっちを向いた羽生と目があった。


私はふいっと目を逸らす。


そのまま何事もなかったかのように、側にいた友達と言葉を交わした。


程無くして美羽が慌てた様子で教室に飛び込んできて、なにごとかと思ったすぐあとに先生が入ってくるのが見えた。


写真を撮っていた面々は蜘蛛の子を散らすように一斉に席につく。


私も同じように自分の席について、モヤモヤした気持ちを抱えながら羽生の後頭部を見つめた。

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