扉の向こう
おかえり


秋風がスーっと吹き抜け
木々がザワザワと揺れ動く。

ヒラヒラと舞い落ちる枯れ葉は
アスファルトを埋め尽くし
カサッカサッと秋らしい足音をたてた。


「さむっ……」

風に目を細め
マフラーに口元をうずめながら
いつも通っている並木道を歩く。


コートにして良かったぁ……

日中の暖かさが嘘みたいに
夜は冷え込む今日この頃。

ファッションも
すっかり秋冬へと変わった。


コートのポケットからスマホをとり出し
時間を確認する。


【PM19:25】


(やばっ……7時すぎてるし)


そう思った瞬間、タイミングよく
着信が鳴った。

♪ピロロロロ……


ディスプレイには
【リンリン】と表示されている。


名前を見たとたんに
何の電話か予想できた。

(きっと、まだ??今どこ??って聞いてくる)


『もしもし……』

トーン低めに電話に出た。


「あ、もしもし?花音(かのん)??ねぇ、まだ??
つーか、今どこよ?」



(ほらね(笑)……)


予想が当たり思わずクスッと笑った。


『今向かってる、ごめんね!もう着くから』


「みんな花音が来るの待ってるんだから(笑)……特に、キヨタとか(笑)」

受話器の向こうから
「はぁ~?!!」とキレてるキヨタの声が聞こえた。


『あれ?キヨタも居るんだ(笑)』


「居る居る(笑)んじゃ、早く来てね~」


『はーい、じゃーね(笑)』


電話を切り、足早に
集合場所の居酒屋へと向かった。






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