眠り姫に恋したのは年下御曹司
「陽平は当たり前が失われていく不安なんて感じなかったでしょ?」


「違うだろ、莉乃。」


「違う?」



口を開いた陽平が真剣な表情を向ける。



「失われていくんじゃない。反対だよ、莉乃。築かれていったんだよ、俺たちの信頼が。」


「…………。」


「最初は莉乃と一緒にいないと不安で仕方なかった。だから『会いたい』…………そうやって莉乃を側に置いた。」


「…………。」


「でも莉乃の気持ちや言葉に俺は信頼していったんだ。もう莉乃は離れていかない、気持ちは離れていかないって。」



無言の私をぎゅっと抱き寄せる陽平の胸に凭れ掛かった。


陽平の声が耳元で囁かれる。


陽平の体が僅かに震えているのが伝わってくる。



「当たり前がなくなるんじゃない。俺は莉乃を信頼してただけ。『離れていかない』って信頼してただけ。なのに…………。」


「…………。」


「簡単に別れるとか言うな。」



陽平が腕に力を込めて抱き締める。
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