眠り姫に恋したのは年下御曹司
「俺にとって莉乃は…………やっと手に入れた女なんだ。」


「やっと?」


「『俺と莉乃の始まり』が余計に莉乃を不安にさせていたのかもしれない。」



始まりは酔い潰れて泊まった日の事だろう。


陽平の気まぐれだと思った。


それは否めない。


だって陽平とは電車で顔を合わしたぐらいの関係だったし、お互いに『見たことのある人』ぐらいだろう。


陽平は何が言いたいのか。



「俺は莉乃をずっと見てた。友人の家に泊まった朝、初めて莉乃を見かけた。」


「ずっと?」


「付き合う半年ぐらい前かな。朝の電車で俺の隣で眠ってた莉乃に心を奪われた。」


「…………なんか嫌。」


「美人の寝顔って欲情を煽られるって初めて感じた。」


「…………美人じゃないって。」


「目を覚ました瞬間なんてヤバかった。目が開かれるのがスローモーションに映ってさ。落ちたのを感じた。」



寝顔に落ちたって信じられない。
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