眠り姫に恋したのは年下御曹司
聞こえてきた声に動きが固まる。


聞き慣れた声に動揺が走る。



「莉乃、誰?」



もう一度聞こえてきた声に振り返れば、やっぱり陽平が立っていた。


私の肩に乗る手を無表情で見つめている陽平が怖く感じた。


我に返った私は手を払い落として、大樹から一歩離れる。


それでも陽平の表情は変わらない。



「陽平、同期の小川。京都支社にいるの。」


「ふ〜ん。」


「小川、こちらは…………。」



周りを見渡して口を噤んだ。


入社式に出席した人が他にもいたからだ。



「双葉です。莉乃とはプロジェクトで一緒なんです。」


「莉乃?」


「はい。」



にっこりと微笑んでいるが腹黒さが見える。


小川も気付いたのだろう。



「莉乃、今週の金曜は空けとけよ。同期で飲むから。」


「私は…………。」


「空けとけよ。またな、莉乃。」



何処かへ歩いていく大樹の背中を目で追い掛ける。
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