眠り姫に恋したのは年下御曹司
本社でも京都でも書式は同じはずだ。



「あっ、佐東さん、お久しぶりです。」


「小川?なんで本社に。」


「2週間だけ出張です。新人研修の講師なんです。」


「片桐と同じか。東京は久しぶりか?」


「です。片桐を少しだけ借りてもいいです?久しぶりの本社で分からない事が多くて。」


「同期だし、遠慮なく使え。」



同期の大樹と付き合っていた頃は私の席によく顔を出していた。


佐東さんとも話をしていたのが思い出される。



『小川、片桐と仲が良いんだな。』


『片桐とは気が合うんです。ほら、コレ仲間だし。』


『片桐も吸うんだな。』



コレとはタバコだ。


昔は吸っていた。


今は…………大樹と別れて辞めた。


すべてを切り離したかったんだ。


なのに今更目の前に現れて笑顔を振りまいて…………何を考えているのか理解できない。



「片桐、教えて。」


「わかった。」



席を立ち上がり、大樹とオフィスを出て行こうとして目が合う。
< 149 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop