眠り姫に恋したのは年下御曹司
こんな大樹は見た事ない。


弱々しい声、頭を下げて許しを乞う姿が目の前に広がっていた。


それでも裏切られた想いは消えない。



「小川、帰ろう。変な目で見られてる。」


「…………。」



結局、駅まで一緒に帰ったが、私達の間に会話はなかった。


大樹が道端で私に頭を下げる姿が目に焼き付いていた。


必死なのが伝わってくる。



「莉乃、また明日。」


「またね、お疲れ様。」



また明日?


違和感はあったが、同じ会社だし、ばったり会う事もある。


深くは考えなかった。


早めの通勤電車で最寄り駅まで揺られて帰る。


頭の中はさっきの大樹の姿が焼きついて離れないでいた。



『俺は後悔してる。』



心からの懺悔だと思った。


でも遅い。


私と大樹は終わってるんだから。


最後に見た光景が蘇る。



『ん?彼女?』



疑問形で言われた『彼女』って言葉が私の胸を締め付ける。


好きな女に絶対言わない言葉だろう。
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