眠り姫に恋したのは年下御曹司
大樹と並んで予約した居酒屋に向かう。


今週だけで随分と打ち解けてしまった気がする。


それでも私は名前で呼んだりしない。


大樹は不満をぶつけてくる。



「莉乃、何で名前で呼ばない?」


「…………ただの同期だから。」


「名前ぐらい呼ぶだろ。」



同期でも名前ぐらいは呼ぶだろうが、私は呼びたくないから呼ばない。


もう時効かもしれない。


陽平という彼氏もいるし、大樹との関係は本当に終わっている。


でも呼びたくない。


あの日の痛みは忘れない。



「いいでしょ。ほら、今日は小川が幹事だからね。」


「莉乃はサポート役だから、先に帰るとかなしだからな。」


「帰らないよ。」



そんな会話をしていた。


大樹は『私との関係を修復したい』とは言わなくてなっていた。


きっとヨリは戻せないと伝わったんだと思っていた。


大樹が東京で過ごすのも残り1週間だけだ。
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