眠り姫に恋したのは年下御曹司
明らかに陽平に向けられた言葉だ。


誰もが理解していた。



「莉乃、彼女に気を遣わせる男なんて辞めとけ。」


「何を言って…………。」


「やり直そう、俺たち。」



大樹の言葉に静まり返る。


私と陽平が付き合っていた過去を同期は知っている。


別れた事も知っている。


何で今…………同期の前で言うの?



「俺たち、やり直さないか、莉乃。」



大樹が振り返る。


目と目が合う。


誰も口を開かない。



「莉乃…………。」

「無理だよ、大樹。もう戻れない、あの頃には。」



大樹の言葉を遮った。


あの頃には戻れない。


戻る事なんて出来ない。


だって私は…………



「裏切りを許せるほど大人じゃないから。」


「…………。」


「私も案外子供みたい。」


「莉乃?」

「俺の彼女を口説かないで貰える?」



大樹の呟きに陽平が口を挟んできた。


皆んなの前ではっきりと『彼女』と言ってくれた陽平を見る。
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