眠り姫に恋したのは年下御曹司
私は今度こそ帰ろうとして鞄がない事に気付いた。


振り返れば、ニヤリとしている陽平の顔が目に入ってくる。


確信犯だ。



「鞄。」


「ん?タクシーに忘れた?」


「…………。」


「聞いておこうか?朝ごはんを食べてる間に。」


「…………。」



何が何でも帰さないつもりか?



「朝ごはんは?」


「食べたら帰るから。」


「送る。俺も同じ駅だし。」


「えっ?」



唖然と陽平を見上げた。


会社に近い実家に連れて来たって言ってた筈なのに。


私と同じ駅に一人暮らししてるって事なのか?


会社からは遠くなる筈だ。



「同じ駅?ここから会社は近いんでしょ?」


「そう。俺も自立したいから、一人暮らししてる。偶然、莉乃と同じ駅なんだ。」


「そうなんだ。」


「そう。朝ごはんを食べに行こ。」


「はいはい。」



何か陽平の思惑通りに事が進められていく。


陽平の手が私の手を繋ぐ。
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