葵くん、そんなにドキドキさせないで。
心の中でため息をついた
意地悪を言われるよりも、この状況は辛いなぁ、なんて。
「田中さん」
「…えっ!あ、はいっ」
いきなり名前を呼ばれてビクッと肩があがった
恐る恐る葵くんを見ると、にっこりとお得意の爽やかスマイルを浮かべていて。
つ、作り笑顔だって、分かってるんだよ?
「どう?バスケ、上手くなった?」
「えっ…と、」
上手くなったかどうかは、分からないけど…
『あの白い線を狙えば絶対入るよ。やってみ?』
『華子ちゃん、ちゃんと膝のクッション使わなきゃ』
赤信号になった横断歩道の前
葵くんの隣に並んで、さっきのことを思い出す