葵くん、そんなにドキドキさせないで。
眉を寄せて、顔をしかめる
それから私の手首を掴んで、くるりと方向転換
「…ちょっ、どこ行くのっ」
駅とは真逆の方向だよ!?
私の声を無視してずんずん進んで行く葵くん
着いた先は少し人通りのない路地裏で
「…田中さん、」
壁に背中を押しつけて、低い声で私の名前を呼ぶ
葵くんが掴んでいたのは手首のはずなのに、
いつの間にかギュッと右手を握られていた
「な、なに…?」
いつもと雰囲気が違くて、戸惑う
「…俺って、独占欲強いみたい。」
「…っ、へ」
「どうしてイライラしてんのか自分でも分かんなかったんだけど、」
田中さんのおかげで解決したわ、なんて、そう言った葵くん。