葵くん、そんなにドキドキさせないで。
「嘘つき」
「本当だよっ」
最初から葵くんのことしか見てなかった。
バッとタオルを葵くんに渡す。
「試合、お疲れさま。その、カッコよかった……です」
こういうことを言うのは恥ずかしいから、小さな声になってしまったけど、聞こえたかな?
そろーっと顔を上げてみる。
そうしたらいきなりクシャッと頭を撫でられた。
「え!?どうしたの?」
「ダメ。今顔上げんな」
撫でてくれるのは嬉しいけど、そんなこと言われたら気になるよ……。
「……意地悪してやろーと思ったのに」
「え?」
「田中さんのくせに生意気だから」
い、言ってる意味が分からないよっ。
なんとかして少し顔を上げて葵くんを見た。