葵くん、そんなにドキドキさせないで。
「お、大野くん?どこから来て……」
「そんなことはいーからいーから」
すぐ近くの階段で盗み聞きしてた、なんて言えないしね。
「その噂さぁ、ちょっと間違ってるよ」
三河は、華子ちゃんに意地悪しようとした女の子たちに怒って、思わず、そう言っちゃっただけだから。
"思わず"っていう言葉を強調する。
ポカンとしている女子たちにニコッと笑ってみせた。
「大好きな彼女がいじめられそうになってたらさぁ、彼氏くんは怒るでしょ。普通」
ね?とさらに首をかしげると、ボンっと赤くなる。
「そ、そうなんだ!」
「そんな事情があったなんて知らなかったの!」