葵くん、そんなにドキドキさせないで。
「うん、わかった」
グラスをカウンターの上に置いて、そっと俺の顔を覗く。
……本っ当に、バカだね。
華子ちゃんにバスケを教えようとしたのも、
ちょっかいをかけたのも、
三河にタオルを渡す手伝いをしたのも、
"あの"王子様の偽物の彼女が、俺のことを好きになったらどんな風になるんだろうっていう、
ただの興味本位からしたことだよ。
「……何にも入ってないみたいだよ?」
なのに、華子ちゃんは全然、俺のことなんか気にしてくれないんだね。
恋とか愛とか。
友情とか絆とか。
俺は信じてない。
「あの、大野くん?」
「……華子ちゃん、俺さぁ、優しい男じゃないよ?」
だから、
そーいうの信じてるタイプの華子ちゃんのことを、
三河ばっかりの華子ちゃんのことを、
めちゃくちゃに壊してやりたくなるんだよね。