葵くん、そんなにドキドキさせないで。
どうして、大野くんは急に私にキスしてきたの?
私のこと好き……とかじゃないよね。それは絶対ないや。
大野くんはチャラチャラしてるから、あれは挨拶程度のキス?
でもでもっ、そんなことする流れじゃなかったし!
「行ってきます……」
「あらっ、もう行くの?ごはんは?」
「食欲ないや。ごめんね」
お母さんにそう言って、身支度を整えて、いつもより早めに家を出た。
『……叶わない恋なんてやめれば?』
どうして、大野くんにこんなことを言われなきゃいけないの?
私が誰を好きになろうが、それは私の自由でしょう?
そんなことを考えながら電車に乗って、学校までの通学路を歩いて行く。
……あ。
少し前にいる黒髪の男子生徒。
後ろ姿を見ただけでわかったよ。