葵くん、そんなにドキドキさせないで。
苦笑いをすると、プイッとそっぽを向く。
……何、俺嫌われてんの?
まぁいーや。
心の中でため息をついて、大野を探した。
教室にいねぇし……どこ行ったんだよ、アイツ。
廊下を歩きながら大野の連絡先を探す、けど。
俺、アイツの連絡先知らねぇや。
チッと小さく舌打ちをして、スマホをポッケの中にしまった。
「……あ」
玄関で靴に履き替えてる大野を見つけた。
俺の声に顔をあげたアイツとぱっちり目が合う。
「もう帰るの?」
「……そーだよ。可愛い先輩に会いにね」
ニコッと笑う大野。
俺と同じ、作り笑顔。
「あ、そーだ。華子ちゃんのこと、慰めてあげてよ」