葵くん、そんなにドキドキさせないで。
周りには全く人がいない。
どうせ、コイツには俺に裏があるってバレてる。
今さらキャラ被るのも面倒くさい。
「……三河に答える必要なくない?」
「……」
「俺に構ってる余裕あんなら、華子ちゃんとこ行けよ」
小さく呟く奴に、チッと舌打ちをする。
掴んだいた腕を離して大野に背中を向けた。
「……俺だって自分が訳分かんねーよ」
大野の小さな言葉、田中さんに電話をしている俺に聞こえてるはずなんてない。
プツッと切れたコール音。
何で出ないんだよ、田中さん。
「……探すしかないか」
中庭、体育館裏、屋上。
どこにもいない。