葵くん、そんなにドキドキさせないで。
「だ、だって……今顔見られたくない……」
少しだけ鼻声。
ふぅ、と息を吐いてベッドの端に座った。
「……泣いてた?」
「そんなこと、」
「あるでしょ。嘘つくなよ、バーカ」
田中さんを困らせるのは好き。
だけど、泣かれると、守ってやりたいとか、そういうことを考えてしまうから、
やっぱり調子が狂う。
「大野にキスされたんだ?」
小さくそう言うと、田中さんが息を飲んだのが分かった。
「……どうして」
「大野から聞いた」
だから言ったじゃん。
田中さんは無防備すぎだって。
なに大野に勝手なことされてんの?
それとも俺にまたキスマークつけられたい?
「……田中さんを見てると、イライラする」
「っ、え?」