葵くん、そんなにドキドキさせないで。
□葵くんの隣にいたいだけなの。
『俺のことだけ見て、俺のことだけ考えてればいいんだよ、田中さんは』
保健室で葵くんに言われた言葉の意味を、ずっと考えている。
ねぇ、葵くん。
あれはどんな気持ちで言ったの?
『……っ、じゃあ俺行くから』
結局あの後、葵くんはこう言って出て行ってしまったけど……。
ガヤガヤと騒がしい昼休み。
陽菜ちゃんと一緒に購買へ行った帰り道の廊下。
下げていた目線を上にあげてから、少し後悔した。
……大野くん。
私と目が合った大野くんは、何か言おうと口を開いて、また閉じた。
私も目を逸らして、彼の横を通り過ぎる。
キスされたあの日から、もうずっと大野くんと話せてない。