葵くん、そんなにドキドキさせないで。
■田中さんなんか好きじゃないよ。
***
葵くんは人気者だから。
片想いしている子達なんてたくさんいる。
そんな子達は、みんな葵くんの恋愛情報に敏感で。
だから、私と葵くんが別れたっていうこともあっという間に広まった。
「三河、今日も女子に囲まれてんね」
「そうだね……」
前と同じ作り笑顔を浮かべている葵くんに、少し切なくなる。
私の席から葵くんを一緒に見ていた陽菜ちゃんは、急に顔を覗き込んできた。
「で、相談したいことって?」
「あ、えっと……」
どうしよう、いざ言おうとするとちょっと恥ずかしいな……。
チラッと隣の席を見た。
大野くんは、まだ学校に来ていない。
次の時間で今日の授業は全部終わり。