葵くん、そんなにドキドキさせないで。


や、休みじゃなかったの?



「大野遅刻、と」




出席簿にボールペンを走らせる先生に苦笑いをしている。




ぱちっと、私と目が合った大野くんは、少し気まずそうに小さく笑った。




「寝坊しちゃった」




寝坊……。


理由が大野くんらしい。




「昨日よく眠れなくてさぁ」


「そうなんだ」


「華子ちゃんに全部言っちゃったなーって、思い出して恥ずかしくなってた」




その言葉にパチパチと瞬きをする。


え、えっと、それって……?




「本当は学校行くつもりなんてなかったけど、」




私から視線を移して正面を見た大野くん。





「……やっぱ華子ちゃんに会いたいなぁって」





少し耳を赤くしてそう言うから、なんだか私も恥ずかしくなってきた。


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