葵くん、そんなにドキドキさせないで。
なんて、こんなのはただの口実。
本当は、葵くん達が教室からいなくなるのを待ちたいだけ。
陽菜ちゃんを見送って、小さくため息をついた。
「三河達のこと見たくないんなら、早く教室からから出ればいーのに」
クスクス笑い声を立てるのは、大野くん。
「一緒に帰ろうよ、華子ちゃん」
リュックを背負って教室の扉に寄りかかっていた。
……葵くん達のことを見たくないのはもちろんだけど、
1人になりたかっただけなんだ。
それで、葵くんに対する気持ち全部を封印したかったの。
「ごめんなさい、私はまだ残っていたいから……」
そう言った瞬間、葵くんが立ち上がった。
後ろの扉から出ようとする。