葵くん、そんなにドキドキさせないで。
そう思ってしまう私って、やっぱり単純?
人に気を許しすぎかな?
だけど、信じたい。
大げさかもしれないけど、優しい人だって、信じてるんだ、私は。
「あの、大野くん」
全部の授業が終わって、帰りのHRも終わったあと。
リュックを背負って帰ろうとする大野くんを呼び止めた。
「ん?」って、不思議そうな顔をする。
ゴクリと唾を飲み込んで、口を開いた。
「話したいことがあって……」
小さくそう言うと、大野くんは何かを察したみたいに苦笑いをした。
「オッケー。じゃ、渡り廊下行こ。体育館に繋がってるとこ」
期末試験前だから、全部の部活が今日から休みになる。
だから、渡り廊下にも誰も来ない。