葵くん、そんなにドキドキさせないで。
名前を呼ぶと、キッと鋭く睨まれた。
「……田中さんなんか、嫌いだ」
「っ……」
「簡単に俺じゃない奴に触られるし、単純だし、お人好しだし」
静かな教室に、葵くんの声が響く。
「鈍感そうに見えんのに俺の作り笑顔見破るし」
「葵く、」
「俺のこと守るとか、本当の俺でいいとか、訳分かんないこと言ったくせに」
「……」
「……簡単に、俺から離れようとするし」
「そっ、それは葵くんが!」
葵くんが、この関係を終わらせたんだよ?
それに、簡単に、とか言わないでよ……。
「……うん、そう。俺のせい」
「え?」
「俺のせいだって、ちゃんと分かってる」