葵くん、そんなにドキドキさせないで。
な、なに?
「ちゃんと言ってくんなきゃ分かんないんだけど?」
「なっ」
葵くんっ!私が言いたいこと絶対分かってるでしょ!?
その顔は、私で遊ぼうとしてる顔だよっ。
「だ、だからっ」
「うん」
「"田中さん"じゃなくて……」
「じゃなくて?」
うう、もう言うしかない。
「……"華子"って、呼んでほしいな」
私はかなりの勇気を振り絞ってそう言ったのに、
葵くんときたら可笑しそうにクスクス笑う。
「ふは、ほんと、可愛いこと言うね」
「わっ、笑わないで!」
もう、ひどいよ。
プクッとほっぺたを膨らますと「ごめんごめん」って。