葵くん、そんなにドキドキさせないで。
「まぁ、ずっと田中さんって呼んでたし。いつか呼んでやるよ」
「えぇっ……!」
いつかって……いつ?
今すぐにでも呼んでほしいのにな。
「顔に出すぎだから。素直だね」
「だ、だって!」
呼んでもらいたいんだもん。
……なんて。
ちょっとワガママ過ぎだよね?
いつか呼んでくれるって言ってくれたし、その時を待とう。
はぁ、とため息をつく。
かなり勇気出して言ったんだけどな……。
「田中さん」
大人しく勉強しよう、と思って教科書に視線を移した時。
葵くんに名前を呼ばれた。
え?
なんて声に出す暇もなく、グイッとネクタイを引っ張られる。