葵くん、そんなにドキドキさせないで。
そっと触れた唇に、目を見開いた。
しかも、それだけじゃない。
葵くんは、今度は私の耳元に唇を寄せて、
それで。
「華子」
……囁いた言葉は、私の名前。
「華子って名前、好き」
「っ、え」
「もちろん華子のことも好きだけど」
「なっ……」
ふ、不意打ちだよ。
まさか呼んでくれるなんて思わなかった。
「顔真っ赤」
「そ、そうさせてるのは葵くんでしょっ?」
ドキドキさせる天才だ、本当に。
「……私の困った顔が見たいから、ドキドキさせるようなこと言うんでしょ」
ふて腐れたように言うと、はぁ?って眉を寄せる。