リボンと王子様
本来の私なら。

よく知りもしない男性にいきなり部屋に連れ込まれて抱き締められたらパニックになる。


だけど、千歳さんだからなのか。

恐さを全く感じなかった。



スッと千歳さんの長い綺麗な指が私の顎にかかる。

ゆっくりと顔を上げた私の瞳に映る漆黒の瞳。

その瞳は今まで見たこともないくらいに真摯な色と妖艶さをたたえていて。

私は囚われたまま動けなくなる。



彼と私の顔の距離がグッと近づいた。

千歳さんの吐息が頬に触れる。

秀麗な顔がゆっくりと傾いて。

私の唇に千歳さんの形のいい唇がそっと重なった。



限界まで見開いた私の目の前に、千歳さんの伏せられた長い睫毛があって。

腰にまわされた手に力がこもる。



まるで私の反応を試すかのような唇がゆっくりと離れて。

恥ずかしさに俯きかけた瞬間。

後頭部に大きな手が回されて。

噛み付くようなキスが降ってきた。



「んっ……!」



吐息が漏れる。

私の呼吸さえも奪うかのような荒々しいキス。

抵抗しようにも後頭部を支えられて逃れることができない。

角度を変えて何度も何度も彼は私にキスをする。

頭の中がぼうっとして、何も考えられなくなる。

押し寄せる千歳さんの熱に目が潤んでくる。

ただ、崩れ落ちないように千歳さんの腕にすがり付くしかできずにいた。



長いキスから解放された時、身体からは力が抜けていた。

そんな私の腰をしっかり支えたまま、千歳さんは色気を含んだ夜色の瞳を近付けて、私の下唇をペロリ、と舐めた。

その色気のある仕草に呼吸が苦しくなる。

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