リボンと王子様
今になって羞恥心が襲ってきてカアッと全身が熱くなる。

きっと私は今、ゆでダコのように真っ赤になっている。


「……可愛い」


そう言って見つめる目に色気が有りすぎて思わず俯くと、彼は胸にギュッと閉じ込めた。


「……ごめん、いきなり……。
我慢できなかった。
夢じゃないって確かめたかったんだ」


バツの悪そうな声が頭上から落ちてきて。

ますます顔を上げられなくなる。



心臓が壊れそうに暴れだす。

頬の熱は一向に引きそうにない。


……ああ、私は。


やっぱりこの人に惹かれてしまっている。

忘れることができる思い出ではなかった。


「俺の名前は響千歳……名前、教えて」


髪に小さなキスを幾度も落としながら、彼が尋ねた。

ギュッと目を瞑る。



……もう誤魔化せない。

何よりも。

これ以上この人に嘘をつきたくない。



「……葛城穂花」

「……葛城……穂……花……?」


私の名前を反芻して。

千歳さんはバッと私の瞳を覗きこんだ。


「その瞳の色……まさか……穂花?
穂花なのか?」


千歳さんの声に驚きか混じる。

肯定の代わりに問い返す。


「……千歳さん、だよね……」

「……本当に?
……穂花だったんだ……こんな近くにいたなんて……」

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