リボンと王子様
「……ごめんなさい、私、あの時……」
「だから何で謝るの?」
困ったように笑って千歳さんは再び私の瞳を覗き込んだ。
「……穂花の瞳の色が好きだよ。
黒でも白でもない、真ん中の優しくて綺麗なグレー」
「………え?」
「俺、あの日、会社の創業百周年パーティに出席してたんだ。
今よりも若かったし、今より知識も経験も武器になるものが圧倒的になかった。
すべての人がそうではなかったけど、近寄ってくる人の殆どが会社越しに俺を見定めようとしたり、計算ずくな人間だらけだった。
もしくは俺の外見だけに惹かれてくる人間。
わかってはいたけれど、そんな現実を嫌っていうほど思い知らされたよ。
そんな空気に疲れて、抜け出したあの場所で穂花に出会ったんだ」
思わず彼を見つめた私に。
そんな顔をしないで、と頬に優しく指を沿わせながら千歳さんは話を続けた。
「……穂花の真っ直ぐな明るい瞳と言葉は全てにウンザリしていた俺に光をくれたんだ。
何の見返りも計算もなく俺の幸せを願ってくれた穂花に……世の中捨てたもんじゃないなって、俺には俺にしかできない立ち向かい方があるって教えてもらえた気がしたんだよ」
「……そんな、私何も……」
「うん、穂花にそんなつもりはなかっただろうってわかってる。
でも俺にはそれくらい大きな出来事だったんだ」
「だから何で謝るの?」
困ったように笑って千歳さんは再び私の瞳を覗き込んだ。
「……穂花の瞳の色が好きだよ。
黒でも白でもない、真ん中の優しくて綺麗なグレー」
「………え?」
「俺、あの日、会社の創業百周年パーティに出席してたんだ。
今よりも若かったし、今より知識も経験も武器になるものが圧倒的になかった。
すべての人がそうではなかったけど、近寄ってくる人の殆どが会社越しに俺を見定めようとしたり、計算ずくな人間だらけだった。
もしくは俺の外見だけに惹かれてくる人間。
わかってはいたけれど、そんな現実を嫌っていうほど思い知らされたよ。
そんな空気に疲れて、抜け出したあの場所で穂花に出会ったんだ」
思わず彼を見つめた私に。
そんな顔をしないで、と頬に優しく指を沿わせながら千歳さんは話を続けた。
「……穂花の真っ直ぐな明るい瞳と言葉は全てにウンザリしていた俺に光をくれたんだ。
何の見返りも計算もなく俺の幸せを願ってくれた穂花に……世の中捨てたもんじゃないなって、俺には俺にしかできない立ち向かい方があるって教えてもらえた気がしたんだよ」
「……そんな、私何も……」
「うん、穂花にそんなつもりはなかっただろうってわかってる。
でも俺にはそれくらい大きな出来事だったんだ」