リボンと王子様
「……あの日から、あの瞬間から。
穂花は俺の大事なたった一人の人になった……だから探した、もう一度会いたくて。
……会って……抱きしめて、もう離さないって決めたんだ」


私を見つめる夜色の瞳に熱がこもる。

ああ、まただ。

私はこの瞳に囚われる。

熱を帯びた綺麗な瞳から視線を外せなくなる。

喉がカラカラになる。



スッと千歳さんの腕が伸びて、私の身体が千歳さんの胸の中に吸い込まれる。

頬に千歳さんのスーツ越しの温かな体温を感じる。

ギュッと抱きしめられた身体。

私と千歳さんの距離がゼロになる。



「……やっと見つけた。
もう……離さない……」



切実さがこもる掠れた声に、理由もなく涙が溢れた。

胸がいっぱいなのに、千切れそうなくらいに痛い。

私はここにいるべきではないのに。

私はあなたに嘘をついているのに。



そんなに優しく抱き締めないで。

そんなに大切そうに包まないで。

その温かさに抗えない、抗いたくない私がいて。

……もう、どうしていいかわからない……。
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