リボンと王子様
グッと腰にまわした腕に力をこめて、私の顔を綺麗な漆黒の瞳で覗き込む。

その瞳に滲む真剣さに気圧される。



「……何かって……」

「……瑞希と会ったりしてた……?」



聞かれている意味が分からず問い返す。



「……買い物に付き合ってもらったり、舞花や樹くんと一緒に出かけたりはしていたけれど……今はアメリカにいるから会っていないし、時々カードや電話をくれるくらいだよ?」



何でそんなことを、と思いながらも正直に答える。

私の答えに少しだけ千歳さんの纏う空気が和らいだ。



「じゃあ、質問。
穂花は瑞希のこと、どう思っているの?」

「……どうって?」

「そのままの意味だよ」



吐息が感じられそうなくらいに近い距離に千歳さんの瞳ががあって。

頬がカアアッと熱くなる。



「……瑞希の前でそんな顔をしたの……?」



スッと頬に千歳さんの長い指がかかる。

千歳さんの形のいい唇が私の瞼に落ちる。



「……ち、千歳さんっ」

「……答えて」



チュッと優しく私の額に、頬にキスを落としながら、千歳さんが囁く。



「す、好きだよ?
……瑞希くんはお兄ちゃんみたいな存在だし……」

「……ふうん。
……瑞希とキスとか、した?」

「し、してませんっ!
何で瑞希くんとキスするの!
ち、千歳さんとしかしたことないっ」



真っ赤になって否定する私を見て。

千歳さんは急にパアアッと満面の笑みを浮かべて。

私の唇を再び呼吸ごと強引に奪った。


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