リボンと王子様
合鍵を渡したくない本当の理由はたったひとつ。
まだ『お手伝いさん』の仕事を続けていて、『葛花穂』の正体を彼に告げていないからだ。
その痕跡がそこかしらに残るこの部屋に。
千歳さんが自由に出入りをするようになってしまえば、勘のいい千歳さんにいつばれてしまうかわからない。
……この一ヶ月。
何度か千歳さんに話そうと思った。
何度も考えた。
だけど、千歳さんの女性関係を探るためにこの仕事を引き受けた、なんてことを千歳さんが知ってしまったら。
有子おばさまと千歳さんの仲がこじれてしまうかもしれない。
公恵叔母さんにも迷惑がかかってしまう。
その考えに行きつく度に言葉が出なくなってしまった。
だけど、そんなのはこじつけで。
言えない本当の理由は。
千歳さんに嫌われてしまう。
軽蔑されてしまう。
そのことが何より恐かったから。
あんなにも彼から逃げていたのに。
見つからないように願っていたのに。
惹かれてるわけではないって思っていたのに。
住む世界が違う、叶わない思いだってわかっていたのに。
彼の胸に自ら飛び込んでしまった。
この恋を……気持ちを抑えられなかった。
まだ『お手伝いさん』の仕事を続けていて、『葛花穂』の正体を彼に告げていないからだ。
その痕跡がそこかしらに残るこの部屋に。
千歳さんが自由に出入りをするようになってしまえば、勘のいい千歳さんにいつばれてしまうかわからない。
……この一ヶ月。
何度か千歳さんに話そうと思った。
何度も考えた。
だけど、千歳さんの女性関係を探るためにこの仕事を引き受けた、なんてことを千歳さんが知ってしまったら。
有子おばさまと千歳さんの仲がこじれてしまうかもしれない。
公恵叔母さんにも迷惑がかかってしまう。
その考えに行きつく度に言葉が出なくなってしまった。
だけど、そんなのはこじつけで。
言えない本当の理由は。
千歳さんに嫌われてしまう。
軽蔑されてしまう。
そのことが何より恐かったから。
あんなにも彼から逃げていたのに。
見つからないように願っていたのに。
惹かれてるわけではないって思っていたのに。
住む世界が違う、叶わない思いだってわかっていたのに。
彼の胸に自ら飛び込んでしまった。
この恋を……気持ちを抑えられなかった。