リボンと王子様
迷いながら仕事を続けていたある日。

千歳さんの部屋で洗濯物を片づけていると。

スマートフォンに有子おばさまからの着信があった。



千歳さんのことで何か言われるのかもしれない……もしや、今の私達の関係を知られてしまったのかもしれない。

鳴り続けるスマートフォンを眺める私の頭にそんな不安がよぎった。



出ないわけにはいかなくて。

震える手で通話ボタンを押した。


「……はい、葛城です」

「穂花さん?
お仕事中にごめんなさいね、今は大丈夫?」

「……はい」

「たいしたことじゃないんだけれど。
あれからどう?
千歳のことで何かわかったことはあるかしら?」


有子おばさまの質問に、千歳さんとのことを知られたわけではなかったと卑怯にも安堵してしまう私がいた。


「穂花さん?」

「……すみません。
特に何も変わったご様子はないです」


私がその原因ですとは言えずに歯切れ悪く答えてしまう。


「そうなの?
おかしいわねぇ、私の見込み違いではない筈なんだけど……ねぇ、穂花さん。
千歳にここは掃除しないでくれ、触らないでくれって言われた場所はない?」

「……えっ!」

「……あるの?」


恐ろしいほどの洞察力に言葉が出なくなる。

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