リボンと王子様
「……そ、れは……」


脳裏に寝室の引き出しが浮かぶ。

今でも大切にしてくれている私の白いリボン。


「大丈夫よ、千歳には言わないから教えてちょうだい。
穂花さんから聞いたことは勿論内緒にするし、何なら場所だけ教えてくれたら、私が探しに行くこともできるんだし」


本気とも冗談ともつかない有子おばさまの一言に、冷水を浴びせられたような気がした。

それと同時に。

いくら有子おばさまでもそんなことはさせられないと思う気持ちが沸き上がった。


「……申し訳ありません。
私にはお答えできません。
今の、私の雇用主は千歳さんです。
その千歳さんを不快にさせてしまうことはいくら有子おばさまでもお話できません」


緊張して声が震えてしまったけれど、一気に言い切った。

激昂される、と身構えた私の耳に届いたのは意外にも有子おばさまの満足そうな言葉だった。


「そう……そんな風に千歳を守ってくれてありがとう。
やはり穂花さんは私達が見込んだ通りね。
これからもよろしくね」


終始ご機嫌な様子でアッサリと電話は切れた。

私は訳がわからなくて、しばらく呆然としていた。
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