リボンと王子様
「……え?」


言われた意味がよくわからず、瞬きを繰り返す私に。


「……その格好は?」


畳み掛けるように問われた。


「えっと……これは……」


いつも冷静で穏やかな瑞希くんにしては珍しく苛立った様子で私の右腕をグッと掴んだ。


「す、須崎様……!」


慌てて田村さんが瑞希くんを止める。


「……事情は母さんから聞いた。
穂花、こんな意味のわからないことは今すぐやめるんだ。
本来の職務に戻りなさい」


睨み付けるように私を見つめる瑞希くん。

瑞希くんのこんな表情もキツい口調も初めて耳にするものだった。

幸いにも、私たち以外にロビーには人気がなく、他の人の注目をあびずにすんだ。

綺麗に整った顔立ちを辛そうに歪める瑞希くんに、言葉がでなかった。


「……あの、須崎様。
ここでは人目もございますので……」

田村さんが必死に私と瑞希さんの間に入ろうとしてくれた、その時。


「……俺のお手伝いさんに何か?」
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