リボンと王子様
その一言に。


私の中で大切な何かが壊れてバラバラになる音がした。

ヒュッと喉の奥が鳴る。


「……必死に穂花を探している俺を見て楽しかった?
穂花を好きな俺をからかって、どんな気持ちだった?
だから穂花は、俺に一度も自分の気持ちを……っ」


そこまで言って千歳さんは私から瞳を逸らした。

千歳さんの綺麗な顔が苦しそうに歪む。


その表情を見て自分がどれだけ千歳さんを傷付けたのかを知った。

こんなに優しい人を。

私を好きだと言って守ってくれた人を。

疑わせて傷付けた。


私はこの人をどれだけ不安にさせたのだろう。

どれだけ辛い想いをさせてしまったのだろう。

そうしたくないと願いながら。

自分のエゴで傷付けた。



さっきまで手を繋いで笑っていたのに。

随分遠い場所に来てしまった。

こんなに近くにいても私達はこんなに遠い。


……もう戻れない。


壊したのは私。

傷付けたのは私。

嘘を重ねた私の罰だ。

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