リボンと王子様
だけど、せめて。


もう一度。

きちんと謝りたい。


自己満足かもしれないけれど、千歳さんを騙すつもりも利用するつもりもなかったことを伝えたい。


それを伝えたところで、以前のように付き合えるとは思っていない。

信じてもらえないことも。

そんな資格が私にはないこともわかっている。


それでも。


私がどれだけ千歳さんを好きか、それだけは伝えたい。




有子おばさまにお手伝いさんを辞める旨を申し出て。

千歳さんに今までのことを告白したら。

気持ちを伝えようと思っていた。



でもそれは独りよがりだった。

結局私は自分のことしか考えていなかった。

傷付けないように、と言いながらも自分が傷付かないようにしていただけで。

自分の描いたシナリオを自分一人で演じてただけだった。

もっと私には。

大事にすべき人がいたのに。

何を言われても守りたい人がいたのに。



どうしてわからなかったの。

失ってから気付くなんて。

そのことが私に寒々とした孤独を感じさせた。

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