リボンと王子様
舞花は小さく頷いた。


「……ここに来る時、駅前で偶然樹に会ったの。
事情を話したら車で送ってくれて。
お姉ちゃんが心配で……急いでいたからごめんね、勝手に事情を話しちゃって……」


私は小さく首を横に振った。


「そっか、樹くんにも心配かけちゃったんだ。
後でお礼を言わなきゃね……ってことは公恵叔母さんも……」

「……うん。
樹、公恵叔母さんの用事で外出していたみたいだから……公恵叔母さんには伝わっている。
さっき、お姉ちゃんがお風呂に入っている時に公恵叔母さんから電話がかかってきて……お姉ちゃんの様子は伝えたけど……公恵叔母さんもすごく心配していたから電話してあげて。
公恵叔母さんも樹もこっちに来るって言ってたんだけど、一応辞退はしておいた。
その顔、見せたくないでしょ?」


ほんの少し茶目っ気を出して舞花が言った。


「そうだね……」


つられて私も小さく微笑んだ。

……よかった。

私、まだ笑えた。



そのあとすぐ、公恵叔母さんのスマートフォンに電話をした。


「……公恵叔母さん?」

「穂花ちゃん?
穂花ちゃんっ?
大丈夫なの?」

「……うん、心配かけちゃってごめんなさい」

「いいのよ、そんなこと!
ごめんなさいね、穂花ちゃん。
元はといえば私が……」
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