リボンと王子様
公恵叔母さんの苦しそうな声に。

私はスマートフォンを耳にあてながら首を横に振った。


「……ううん。
公恵叔母さんは何も悪くないよ。
私が、千歳さんを傷付けちゃったの。
もっと早くきちんと話せばよかったのに……」

「……穂花ちゃん。
とりあえず、しばらくは休んで。
……お手伝いさんはもう辞めましょう。
有子さんからも連絡はいただいているから。
有子さんもあなた達をとても心配していたわ」

「……公恵叔母さん。
私、火曜日から秘書課に出勤してもいいですか?」

「えっ?
それは構わないけれど……でも穂花ちゃん……」


心配そうな公恵叔母さんの声に。


「私は……大丈夫。
いつまでも休職扱いにしてもらうわけにもいかないから……」


無理矢理、元気な声を出す。

フウ、と公恵叔母さんが溜息を吐く音が聞こえた。


「……それならいいけど。
無理はしないでちょうだいね。
何かあったらすぐに電話するのよ、いいわね?
社長命令よ」


公恵叔母さんとの会話を終えて。

今日は泊まるから、買い出しに行くという舞花を見送った。


ゆっくりとソファに座る。

一人になると静寂が訪れた。


無意識に玄関ドアに視線が向かってしまう。


今、千歳さんは部屋にいるのだろうか。

何を思っているのだろうか。


もう私を嫌いになってしまった?

私の顔なんて見たくない?



……私はこれから、何を、どうすればいいのだろうか。

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