リボンと王子様
千歳さんに出会うまでは。

舞花に心配されながらも。

頼りないと言われながらも。

一人で何でもそれなりにこなしてきた。


自分がそんなに弱い人間だとは思っていなかった。


だけど。


千歳さんは。

私を泣きたくなるくらいに甘やかしてくれた。

温かいぬくもりをくれた。


誰かに。

自分が想いをよせる誰かに。


特別に想ってもらえることがどれだけ幸せなことか。

わかっているようで私はきっとわかっていなかった。


当たり前のように千歳さんは私の傍にいてくれて、私の手を繋いでくれた。



『好きだよ』



贈ってくれる言葉がどれだけ私を守って支えてくれていただろう。


……私はひとつも返せなかったのに。


全てが崩れてから伝えるなんてタイミングは最悪で。

何よりも自分勝手だった。


私はとても弱くて狡い人間で。

愛しい想い出は指の隙間から砂のように零れ落ちて。

もう戻れない。


心が凍りついたように冷たくて。

粉々にくだけ散ってしまったように痛かった。


このまま私の心が無くなってしまえば、もうそんなことも考えなくなる……?

止まった筈の涙がまた溢れた。



千歳さんのいない毎日を私はこれからどうやって過ごしていけばいいのだろう。

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