リボンと王子様
目の前に広がる滑走路。

堂々とした巨大な白銀の機体が目の前にあった。


「飛行機ってかっこいいよね。
こんなに大きな物が空を飛ぶなんて今更だけど信じられない」


二人きりになって緊張も伴い、うまく話を切り出せず関係ないことをペラペラ話していた。

そんな私に。


「穂花、気を遣ってくれなくていいから」


瑞希くんが落ち着いた声をかけた。


「事情は大体樹に聞いたけど……今も、千歳が好きなんだろ?」

「……!」


言われた言葉に瞠目して。

それからコクン、と頷いた。


「……ごめんなさい」

「何で謝るの」


フワッと私より何倍も大人びた表情で瑞希くんは微笑んだ。


「俺の方こそごめんな。
……この間、恐がらせちゃっただろ?
腕はもう大丈夫か?」


いつもと変わらない瑞希くん。

いつも通りの優しすぎるお兄ちゃんだ。


「大丈夫……でも何で……」


瑞希くんの眼鏡の奥の瞳に、少しだけ悲しそうな色が見えた。


「あの日……マンションで千歳を見つめる穂花を見て思ったよ。
……千歳の態度も。
あんなに余裕がない千歳は初めて見た」


淡々と話す瑞希くん。

余裕がない?

まさか、余裕がないのはいつも私なのに。

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