リボンと王子様
「今更だけど。
俺は穂花が好きだよ。
ずっと好きだった。
妹でもただの幼馴染みでもなく、一人の、共に将来を考える女性として」


真っ直ぐに私を力強く射抜く綺麗な瞳。

……どうして今まで気が付かなかったんだろう。


瑞希くんの瞳は間違いなく一人の男性のものなのに。

気付かずに甘えてばかりいた。


ううん、気付こうとすらしていなかった。

どれだけ瑞希くんを傷付けたのだろう。


……私は本当に周りが見えていない。

大切な人を傷付けてばっかりだ。


「……ごめんなさい。
瑞希くん。
私、どうしても千歳さんが好きなの」


震えそうになる声に負けないようにしっかり瑞希くんを見つめる。

真剣な想いを真っ直ぐにぶつけてくれた瑞希くんに。


誰よりも私を守って支えてくれた大切な人だから。

誤魔化さずに正直に返事をしたかった。

もう誰にも嘘はつきたくない。


「……わかった。
ありがとう、答えを聞かせてくれて」


気持ちに応えられなかったのに。

甘えてばかりだったのに。

こんなときでさえ瑞希くんは、泣きたくなるくらい優しい。


だけど絶対にここでは泣かない。

滲みそうになる涙を瞬きをして必死で押し返す。



ギュッと拳を握りしめた。
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